『そらのおとしもの』居酒屋トーク第2幕!斎藤監督ほかスタッフのこだわりをご紹介!
|サーファーズパラダイス(そらおとカフェ-そらのおとしもの情報局-)に続き、居酒屋座談会第2幕を公開!スタッフも首をかしげる、監督のこだわりとは!?
<『そらのおとしもの』座談会 参加者>
斎藤久監督(以下 斎藤)
AIC ASTA 黄樹プロデューサー(以下 黄樹P)
キャラクターデザイン・渡邊義弘(以下 渡邊)
メインアニメーター・鷲北恭太(以下 鷲北)
見月そはら役 美名(通称はらみ、以下 美名)
ニンフ役 野水伊織(通称いおりん、以下 野水)
角川書店 仮面プロデューサー(以下 仮面P)
プレセペ ライターU(以下プレセペ)
サーファーズパラダイス ライター・A(以下サーパラ)
アミュスタイル ライター・F(以下アミュ)
■ 第6話で起きた「ホットドッグ?アメリカンドッグ?」騒動
黄樹P:ニンフは割とハキハキとしているところとかハッキリとしているところが思いのほか立っていたので、もっとハッキリ行動的にツンケンしている態度を見せよう、とか、作画には間違いなく影響しましたよね。第6話を見て思ったんだけど、ニンフって最初だけミステリアスチックに動いているんですよ。割とおとなしく体育館座りしていたりとか。
野水:かと思えば助けに行っちゃったりとかしちゃいますしね。
美名:コメンタリーで話したんだけど、あのホットドッグは最初アメリカンドッグだったらしいよ。
野水:え!えぇっ?!
斎藤:それは、単純にうちの間違いです。
野水:ホットドッグじゃなかったんですか?!
黄樹P:脚本上はホットドッグだったの。だけど、監督が絵コンテに“アメリカンドッグを差し出す”、と書いたんですよ。でも絵がホットドッグで、思わず「なぜホットドッグにしたんですか?」って聞いたら「いや、最初からアメリカンドッグじゃないですか」と。なんだか話がかみ合わない(笑)。
斎藤:コンテを起こすときに、せっかくだからまわりの人に聞いたら、アメリカンドッグとホットドッグ、どっちの言い回しがいい?と聞いていたら、どっちでもいい、って話になったんですね。
黄樹P:いやいや、全然違う食べ物だよ!?(笑)
斎藤:ニンフが「美味しい」っていうセリフがあって、「海でアメリカンドッグは美味しく食べられないですよ!」という意見が出て、「じゃあホットドッグにしましょう」と。
美名:「ドッグだからどっちでもいける!」ということですか?
黄樹P:まあたしかに、映像にするにはそっちの方がいいよねって話にはなったんですよ。ニンフが「美味しい」と言うのなら、アメリカンドッグをそんなに感動して食べることはないよなぁ、と思いました。まあホットドッグで正解でしょう、と。
美名:でも、この話を聞いたら絶対もう一回見たくなりますよね。第6話は上映会があったじゃないですか。オーディオコメンタリーで話を聞いたところによると、上映バージョンとTV版は変わっていて、TV版から更にDVD版も修正が入るらしいです。
野水:そうなんですか?!
斎藤:例えばですが最後の方の電車のシーン、上映会で見た人はわかると思うんですが、窓の外の背景の流れ方がすごく早いんです。
黄樹P:「新幹線並みにものすごいスピードで(背景が)流れているぞ!」って。(笑)
■ 監督がこだわった動物たち
仮面P:そういえば4話のパンツが爆発する話で、カラスが餌を漁るシーンは何か深さを感じたんだよね。
美名:「トモちゃんの馬鹿!信じられない、大っ嫌い!もう知らない!」のシーンですね。
斎藤:智樹が「お前の行動なんて全てお見通しだ」って言ってるじゃないですか。そこにカラスのシーンをかぶせているんだけど、都心部のカラスっていうのは妙に知識が付いているので、ネットを張っていても勝手にそれを破って漁るじゃないですか。それぐらいの浅知恵が智樹(の知恵)なんだよっていう。
黄樹P:動物シリーズはどれも深くて、監督に聞かないとその意図が分からないんですよ。
渡邊:でも描きながら説明してくるんですよね。描ききったら「どうですこれ?これ、こういう意図があるんですけど」って「俺は凄いぞ」みたいな感じで言ってきて(笑)
斎藤:でも最初はなかなかアイディアが浮かばないんですよ。
美名:でも深いです。カラスにそんな意味が…。
斎藤:ただ、あんまり視聴者に対して首をかしげるほどやってもしょうがないので、普通に見ていたらアッサリ流せる程度にしていますね。
黄樹P:実際に3話以降からは毎回、DVD向けの手直しが入っていて、かなり見た目の印象は変わるかなと思います。でも監督の手直しのポイントが分からないんですよ。ヘビとか、ニンジンとか(笑)
斎藤:いやいやいや(笑)
プレセぺ:動物はかなりこだわっていますよね。
黄樹P:こだわりますよね。3話の冒頭で、魚を水槽に戻すところの水の上がり方がリアルじゃない、とか。
美名:3巻のオーディオコメンタリーではそんな話ばかりでしたね。「そはらについてどうだったか」という話もなく。
斎藤:一応話題にはなったんですよ、そはらも。でも、盛り上がったのは「食べ物がリアルじゃない」とか「動物がリアルじゃない」とか(笑)
美名:監督が「このそうめんがおいしそうじゃない」って話をされたり。
黄樹P:水に色が塗られているのがとにかく嫌だったようで、透明なものは透明がいいと
こだわってました。
野水:でもありますよね、どこまでも青い海とか。
斎藤:コップの水が透けてなかったりとかね。
美名:そういえば守形の住んでいるテントには何か磁場が働いているとか……。
黄樹P:守形のテントって実は見た目だけで、下にマンホールがあって凄い地下室があるんじゃないか、ってスタッフの間で言ってたんですよ。そこでは自転車が置いてあって自家発電もしている、とか。原作を見ていると、守形がいつも乗ってる自転車が見あたらないんですよ。それに、どうやってパソコンなどの電気を使ってるんだろう?という疑問もあって。分からないことが多かったんで、テントに入ってシートをめくるとマンホールがあるんだよ、と話していましたね。
斎藤:でも、テント内の明かりはランプなんですよね。
鷲北:今思えば、テントの横に守形先輩の自転車を置いていても良かったかもしれないですね。
■ 「そらおと」キャラの等身の秘密
仮面P:渡邊さんは監督のこだわりのリテイクとか思い出に残ってるものはありますか。
鷲北:いっぱいあるんじゃないですか?
渡邊:最初の頃に水無月先生のプロポーションが漫画のコマによって全然頭身が変わってたりしたので、アニメの設計図として皆に描いてもらうために、どれぐらいの等身に統一するのがいいのかな、と何回も煮詰めましたね。一回クリンナップしたときに「まだ等身が高くて高校生に見える」と、色々修正が入ったんです。
斎藤:原作通りの等身にしちゃうと高すぎるんですよ。かといって低く過ぎると今度は原作の絵と印象が変わってしまうので。
渡邊:智樹の等身が高いとイカロスや守形がかなり大きくなってしまうので、中2でも小さい部類に入る智樹はこれぐらいだろう、ということで5等身ぐらいにしました。
美名:身長差ははっきり出ていますよね。原作を見ると智ちゃんとそはらは身長差があるか分からないんですけど、アニメを見ると、「そはらってこんなに大きかったんだ」って思いますね。
黄樹P:実はそはらが普通で、智樹が極端に小さいんです。あと、ビスタサイズで制作していると、どうしても等身が高いキャラが画面に収まりづらいんですよね。全身を入れるようにすると両脇が開きすぎてバランスが悪いので、キャラクターの顔はギリギリ一杯まで大きくしてもらって、中学生らしいプロポーションのバランスで、という注文したんです。
渡邊:よろしかったら設定画を持ってきたんですよ。
美名・野水:わー!みたーい!!
渡邊さんが取り出したのは、自ら手がけた多数の設定画集。
目がキラキラと輝きだした美名さん、野水さんの二人は、設定画に釘付けに…。
美名:SD版イカロス、超可愛いですね。
鷲北:SDキャラはSDキャラで大変でしたよね。
黄樹P:意外にSDの絵が安定しなかったんですよね。単純にSDキャラを可愛く描く人が少なくてそれが大変でした。
渡邊: SDキャラは鷲北さんに一任してもらったりしました。
黄樹P:SDキャラの智樹はどれぐらい馴染めるのかが問題だったんだけど、意外と始めてみたら、すんなり馴染んでくれたんだよね。最初はすごく浮くんじゃないかなって思っていました。智樹だけがSDキャラで他のキャラクターはリアル等身なので、そこが耐えられるかどうかだった。
渡邊:前半はずっと試行錯誤はしてましたけどね…あ、それは最終話の衣装替えとかダメージ設定とかですね。
ここで美名ちゃんたちが見ていたのは最終話の設定画。
美名:会長さんのコートが可愛かったですよね!
斎藤:13話は全キャラ今までとちがう服の色で、色指定しました。イカロスは今まで白か青の服を着せていましたが、ピンクをメイン色にしたり、最終回はクリスマスパーティーだし、そはらはちょっと着飾ってみようかなと。
野水:そはらちゃんもそうなんですけど、タートルネックを着ていたりして、女の子的に見てもリアルな感じがして可愛いです。
渡邊:ニッ○ンのカタログ様々です。(一同笑)
美名さん、今度は各キャラクターの身長比較図を見て、ハーピーに注目。
美名:ハーピー、大きいですよね。
渡邊:さらに、戦闘時にハイヒール状態になってヒールアップするんですよ。
黄樹P:気付いた人もいると思うけど、最後、足の爪が破壊されているんですよね。実は身長自体はそんなに高くはないんですよ。
プレセペ:そういえば、各キャラ、たくさん衣装が用意されている中で、守形先輩はいつも制服でしたね。
渡邊:夏服と冬服だけなので凄く楽でした。
黄樹P:ただ、胸ポケットがなくなる事件が起きまして…。DVDを見ると分かるんですが、胸ポケットの描き足しが多いんですよ。
鷲北:直したらポケットなくなっちゃった、という事もありましたね。
美名:私、イカロスの空の女王(ウラヌス・クイーン)モードの髪形が好きなんですよ。このざわざわってしているのが凄く好きで、羽根も違うしドレスアップしてますよね。
さらに、渡邊さんが持ってきていた設定画の中から、今度は写真らしきものを発見する美名さん。
美名:あ!なんですか、これ?
渡邊:ああ、トモ子のブラジャー。の参考写真です。
美名:パットが入ってるんだ。知らなかった!
美名:これだけ置いてあったら変態ですよ。“ブラジャー裏側参考”って。
渡邊:流石のニッ○ンも表側はないんで。
斎藤:で、まあ自分も色々女性の下着を調べた時に、なるほど、ブラジャーの下にはパッドが入ってるらしい、これはやらなければ、と。
黄樹P:俺は藤田さんにセリフを言わせたいだけだと思っていましたけどね。
斎藤:まあ結果的にはそうなってしまったんですが…。(笑)
黄樹P:いやいや、絶対そうだよ!トモ子役が決まった時点でコンテで暴走してるように見えたもの。
斎藤:いやいや…そんなことはないですよ。
■3Dモデル制作苦労話:そんなものまで3Dで?!
プレセペ:そういえば3Dモデルは沢山作っていますよね。毎回必ず最後の提供クレジットに3Dで作られたものを見せていましたけど、一番苦労したものって何ですか?
黄樹P:3Dで一番苦労したのなんだろう…。空飛ぶパンツはノリノリで作られちゃったからね。
渡邊:そうですね。
斎藤:海なんかは、実は正確に3Dで組んでないんですよ。3D制作なんですけど、聞いたところによると、波の動きなどを全部計算して動かすとスーパーコンピュータがないと無理なんだそうで。
黄樹P:あとはオーケストラも3Dでしたね。あそこはかなり頑張ってくれました。「他のオーケストラを動かすアニメに負けたくない!」という感じで。某オーケストラアニメでずっと演出していた秋田谷さんが実際の演出担当だったんですけど、「あのアニメ以上のオーケストラシーンをやってくれ」って言ったら、サンジゲンさんがものすごいCG技術を導入してくれて、秋田谷さんは感動してましたね。「元ネタアニメよりも凄いっすよ」って驚いていました。
斎藤:バイオリンの演奏でもちゃんと上半身動いているんですよ、よく見ると。
黄樹P:残念だったのが、オーケストラ全部が画面上に入ってないんで、「何かのパートが足りないんじゃないか」っていう話が出るんですよ。でも事実上は全部入ってるんです。
斎藤:ちゃんと演奏に必要な人員は配置しているんですよ。
黄樹P:実際に音楽として本編に使用した曲には映像がありまして、その映像自体を題材にして組んだので、曲と映像は完璧に同じ構成になっているんです。ただ、TVフレームに収まっていないだけなんですよ。でも、ちゃんと全員いるんだよってことを見せたかったみたいでサンジゲンさんからのご提供もあり、全部がいるよってことで動かしています。本編では確認できなかった人もいるかもしれませんが、一度確認して頂きたいです。
斎藤:最初、引き絵では全員入ってるショットがあるんですよ。
黄樹P:ただ、ロングすぎて分からなかったんですよね。幕を開ききる前に次のシーンに移っちゃたりもするので。
斎藤:バイオリンにしろ何にしろ、オーケストラを再現する為にちゃんと40人以上配置しているので、そこらだけは伝えたいなという気持ちはありますね。
■毎回変わったエンディングの裏で、生まれた新たな肩書き
プレセペ:EDの映像を毎回変えるのは大変だったんじゃないですか?
黄樹P:いやー、かなり大変でした。最初はね、単純に正式なエンディング映像が全く思いつかなかっただけなんですよ。監督は思いつきありましたED?
斎藤:んー…あんまりなかったかなぁ。
黄樹P:1話はオープニングなし、2話でエンディングを変えましょうと、まず決めて、3話からは正式なエンディング映像を作りましょう、という話だったんですが、僕と監督は全く思いつかなかったんですよ。色々考えているうちに、ここまで来たら毎回変えてもいいかな、変えた方が面白いかなと。途中から悪ノリですよね。
斎藤:最低4回はED変えてもいいんじゃないって思ったんです。「一本で統一するのは無理ですし、EDを何回か変えたいんです」っていう話をしたら、コロンビアさんの方から「全曲変えましょう」って(笑)
黄樹P:じゃあ絵も全部変えようかということになりまして、そこからはやれるかやれないかでした。多分、今のAIC ASTAという現場がベテラン揃いのチームだったら「そんなの無茶だからやめて下さい」とか誰かが言っていたと思うんですよ。だけど実は、今のASTAスタッフは新人ばかりであまりベテラン勢がいなかったので、あまりそれに疑問を抱かずにやっちゃった。「ああ、上の人達がそういってるからそれをやらなきゃいけないんだ」という状況でした。(笑)
鷲北:僕、本当は「全話エンディング映像の原画だけやって」と誘われたんですよ。
黄樹P:「エンディングを全話描き下ろしにするんで、それをやってもらえませんか」って
言って鷲北さんに声をかけたのが最初でしたね。ところが本編でも色々「やってよ」「やってよ」って、言っていたら……。
鷲北: PVの時でしたっけ。イベント合わせでPVの制作をしている時に「エフェクトも作監入れなきゃダメだ」と監督が言いだして、「エフェクト作監をやってくれ」と言われ、そこでエフェクト作監になっちゃった。で、イベント合わせの時のポスターでは、エフェクト作監として名前をもらってたんですが、放送間際に「エフェクトだけじゃなくてSDキャラの修正などもやってるので、チーフかメインにして」って言ったのが9月末あたりです。
仮面P:それでメインアニメーターって肩書きになったんですね。
さてさてさて、斎藤監督&スタッフのこだわり、皆様分かっていただけたでしょうか?
座談会の続きは東京アニメセンターにて2月26日公開予定です!!
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